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The New Takeuchi Journal Plus+

On The Web Worldwide Since 2001.01.01

無数の種がまかれた

アメリカの思惑通りにいかなかったところが、WBCの成功の要因だと思う。アメリカが予定通りにホームランをパカスカ打って勝利していたら、第2回大会はなかったかもしれない。もしそうなったらアメリカ以外の国の人には、おもしろみのない大会と映ったことだろう。


日本だって、メキシコががんばってくれたから優勝までたどり着いただけで、日本チームが最強だと思っている人は少ないだろう。どこのチームにだって負ける可能性はあった。アテネオリンピックでは、どういうわけだかオーストラリアに2回負けた。そんな勝負の不思議さこそが、短期決戦の魅力なのだ。人は「最強」という響きに弱い。自分も昔は弱かったのだが、最近ものすごく価値観が変わってきた。「強い・弱い」に反応しなくなってきて、「うまい・おもしろい」に敏感になってきた。


勝ち負けが「おもしろい」の一要素に取り込まれちゃった感じで、プロレスのベルトと同じくらい価値がなくなってきてしまった。プロレスのおもしろさは勝負をうやむやにしてしまうところにある。ベルトを持っている選手が一番強いわけではなくて、ストーリーのアクセントとしてベルトというものを賭けて戦うわけである。


今回の優勝もそれと同じ。ここから各チームのリベンジのストーリーがはじまるのである。韓国、キューバは打倒日本を掲げてくるだろうし、アメリカは威信を賭けて第2回に挑んでくると思う。日本は新たなチーム編成で彼らを迎え撃たなくてはならない。今度は松井は出てくれるのか?新たなスターは出てくるのか?そんな「つづく」がたくさん出てきた大会になった。


もし、冒頭のようにアメリカが勝っていたら、第2回大会は「アメリカに挑戦する各国」というひとつのストーリーしか展開されず、つまらなかったと思う。今回の大会も最初はストーリーがはっきりしていなかった。そのせいかアジアラウンドはあまり盛り上がらなかった。イチローだけが妙に挑発的な発言をしていて、一人目立っていた感じだった。


そこから2回負けたことでリベンジストーリーができて、韓国戦は異様な盛り上がりをみせた。なんか「橋本真也負けたら即引退スペシャル」みたいな悲壮感が漂っていた。個人的にはナショナリズムを前面に押し出した両国のライバル関係は嫌いだ。いやな盛り上がり方だから、日本も韓国も嫌いになる。それでも準決勝のあとにパク・チャンホが「大塚やイチローなど親しい選手の多い日本が頂上に立ってくれればと思う。彼らは私とは国籍は違うが、トップになるため同じ道を歩んでいる選手たちだ」というコメントを残してくれて救われた気分になった。


今回の大会、優勝した日本は5勝3敗だった。この3敗は課題となる負けでもあるが、大会を盛り上げるうえで、とても大きな負けだった。8勝0敗じゃなくて本当に良かった。なんだか一区切りついてしまったが、ペナント開幕は今週末だ。こんな大事な時期にチームをずっと離れていた王監督には本当に頭が下がる。ありがとうございました!